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超長文 宝塚花組新人公演『エリザベート』 [2002年 宝塚歌劇]

2002年10月23日送信

秋もどんどん加速してきましたね。全力で秋化!!みたいな(意味不明)。

さて、宝塚・新生花組『エリザベート』の興奮も覚めやらぬ今日この頃、とろりん、初めて新人公演を観てきました!!花組新人公演『エリザベート』です。

宝塚ビギナーの方に少しご説明します。宝塚歌劇団では、入団7年目までは「新人」という扱いになります。

宝塚歌劇では各組がローテーションで公演をするわけですが、各組による公演中、一回だけ、上演中の演目を新人だけで行われる機会があり、それを「新人公演」(略して「新公」)と言うのです。

この新人公演と区別するために、通常の公演のことを「本公演」と言ったりします。この新公で主役やヒロインを演じれば、スターへの階段に足をかけた、といえます。

とろりんさん、今までは本公演だけで全然満足していた人なのですが、今回、とろりんが現在激しくイチ押し中の若手、蘭寿とむの主演、しかも最後の新公出演(蘭寿、今年7年目なので)と、いうことで、思わずチケット取ってました(笑)。

主な配役は以下の通りです。(丸数字は入団年数、カッコ内の名前は本役)

トート:蘭寿とむ ⑦ (春野寿美礼)
エリザベート:遠野あすか ⑤ (大鳥れい)
フランツ・ヨーゼフ:未涼亜希 ⑤ (樹里咲穂)
ルイジ・ルキーニ:桐生園加 ⑤(瀬奈じゅん)
皇太子ルドルフ:愛音羽麗 ⑥ (彩吹真央)
皇太后ゾフィー:桜一花 ④ (夏美よう)

当日の大劇場雰囲気からお伝えしましょう。劇場入口前には、立ち見券を求めるファンの行列!!

約60回ある公演中、1回しかない新人公演。よーく考えたら、かなりのプラチナチケットですわね…。思わずチケットの入った鞄を抱きしめるワタシ(笑)。

劇場の改札を抜けると、新公のプログラムをもらいました。いやぁー、貴重なものをもらってしまいました。B4、三つ折の簡素なもので、表紙は主演の蘭寿、開くと、蘭寿とヒロイン・遠野の挨拶。中面は劇中の場面と配役表となっています。

花新公プロ2002・10・22.jpg

↑コチラが、そのプログラムの表紙です。さすがにスチール写真は蘭寿の本公演の役、ハンガリーの革命家・エルマーくんのまま(笑)。皆さん、これはトートじゃないので、念のため(笑)。

宝塚の駅に降り立った時から大劇場の客席につくまで、まるで自分のことのようにドキドキしっぱなしのとろりんさん。「ああ、我が子のバレエの発表会を観に行く母親の心境って、こんなんなのかな…」と、既に訳の分からん親心全開(笑)。

主演、蘭寿とむによる開演アナウンスで、いよいよ新人公演『エリザベート』の幕が上がります。

まずは全体の印象から。

…新公と侮るなかれ、です。入団8年目以上の生徒が抜けるため、本公演の群集シーンや群舞の迫力は欠けるし、スターの風格とかオーラの大きさには及びませんが、独特の熱気と気合、パワーが放出された舞台でした。

台詞が抜けたり、歌声がかすれたり、エリザベートが階段から落っこちそうになったり、という失敗や、進行が段取りっぽくなる感は否めないものの、2週間に満たない稽古期間で、しかも新人だけで、あれだけの舞台を創りあげたのには、本当に感動しました。若人って、素晴らしい…(…おーい。笑)

それでも、「やっぱり新公やな…」と強く感じたのは、立居振舞や衣装の扱い方。特に娘役さんのドレスの扱い方は、非常に困ったものがあります。

例えば、エリザベートとフランツの披露宴の舞踏会。皇帝夫妻のお披露目のダンスなのに、フランツ、エリザのドレスの裾を踏みまくり(笑)その後、ステップも全然おぼつかなくなって、ヨタヨタ。あげくの果てに足元が全く動けなくなって、とうとう立ち往生。ダンスはまだ続くはずだったのに…。転倒しなかっただけ良かったけど…。

本公演では全く気にしたことがなかったので、ものすごく気になりました。軽々とステップをこなしていた本役さんたちって、さすがです。

遠野をはじめとする娘役は、ドレスの裾を持て余し気味で、もっとドレスの扱いを練習する必要があります。(フランツに求婚された遠野エリザが、足首が丸見えになるまで、ドレスの裾をガバッと持ち上げて銀橋に出て来たのは、言語道断)

娘役のドレスの裾の扱い方は、実は、相手の男役に対する気遣いでもあるんです。ドレスさばきが巧ければ、その分男役はすごく踊りやすくなる。客席からの見ても、舞台での立居振舞が非常に美しく映る。もっと立ち居振る舞いに気を遣ってくれたらな、と思います

*****

ああ、また長くなってきましたね…。秋の夜長ってことで、許して…(??)。

以下は出演者に関する感想です。

トート役を演じた蘭寿とむ。(しかしなー、「とむ」て…外人ちゃうねんから)

最後の新人公演で、しかも大作の主役(兼座長)、ということで、(終演後の挨拶でも、「一杯一杯でした」と告白してました)
第一部は、「ちょっと、ちょっとらんとむ、どーしたん!?」というのが正直な感想。

(「らんとむ」というのは蘭寿の略称。エノケンみたいなもんですかね)

全体的に、肩に力が入り過ぎ、という印象です。歌も何度か声が割れたり、乱暴でガサツな歌い方になってしまったり。最初の場面、初めてエリザに出会い、一瞬にして惹きつけられた、その表情の変化がめちゃくちゃ良かっただけに、残念…。

どうするんやろ、とヒヤヒヤした蘭寿のトートですが、第二部ではようやく自分を取り戻したのか、歌も演技もだいぶ安定しました。

皇太子ルドルフの霊廟の前で歌う、『愛と死の輪舞(ロンド)』など、自分が「死」でありながら人間であるエリザを愛してしまったトートの苦しみが、とても伝わってきました。

彼女のこれからの課題は、男役としての表情の見せ方の研究と、歌の強弱のつけ方。とても素敵な表情をすることもあるのですが、(↑上記の場面とか)ふとした時に、表情が女性のものに戻る瞬間があります。

もともと蘭寿の声は、キーが高めで、声質がかなり硬質だと思います。音域も狭いのかも…。緩急自在の、深みのある歌唱力が要求されるトート役は、蘭寿にとっては、かなり苦しい試練だったと思います。

彼女のトートが公に、そして歌劇団にどのように評価されるのか、今はまだ分かりません。しかし、今回の公演で彼女が悩み、苦しみ、そしてとにかくやり抜いた(反省点や課題は山積みであるにせよ)、という事実は、いつか必ず、彼女の糧になるはずです。この経験を無駄にせず、自分の行くべき道を目指して、素敵な男役さんになって欲しいですね。

あーっ、蘭寿にこんなにスペースを!(しかも最後はかなりファンレター化!!←笑)

ヒロイン、エリザを演じた遠野あすか

…白旗っ(笑)。

前回の花組公演での評価が、あまり私の中では高くなかっただけに、今回のエリザの好演には、正直、頭が下がる思いです。彼女の学
年(入団年数)を考えてみれば、よくここまで自分のエリザベート像を創りこんだ、と思います。好演でした。

この芝居では、エリザは14~60歳までの年齢を演じなくてはいけないのですが、声音を巧みにコントロールして、その年齢感を感じさせました。心配された第二部の、晩年の芝居も上手く乗り越えました。何より歌が素晴らしかった。

ただし、演技が淡白すぎるな、という印象を受けます。表情過多のきらいがあるのですが、その割りに台詞とか淡々としているなー、と。今回は役柄的に、ある程度自己完結型の芝居でもOKでしたが、相手役とがっちり組む芝居となると、今の芝居の取組み方では、課題は残るかも…。あとは立居振舞には研究を重ねて欲しいですね。(←重要ポイント)

今回の出色は、2番手、フランツ・ヨーゼフを勤めた未涼亜希と、暗殺者ルキーニを演じた、桐生園加

未涼は、すっきりとした印象で、若き皇帝を丁寧に演じていました。また、歌も端正な歌い方で、高音も伸びやかで、聴いていて心地よくなります。

桐生は、今回の新人公演のベストアクトと言って良いでしょう。…正直な感想としては、本役の瀬奈じゅんを上回っています。(私が観劇した13日の本公演と比較して、ですが)

何故そう思ったか、理由は1点のみ。桐生は、ストーリーテラーとしての自分の役回りを、的確に把握していた、という点だと思います

目立つべきところで、自分を存分にアピールする。(第2部では客席から登場、という美味しい場面つき!←新公のみの演出)なおかつ、観客に伝えるべきことを、しっかりと伝える。逆に、目立つべきでない場面では、舞台に乗ったまま、その成り行きを、その狡猾そうな眼差しで静観している。そのメリハリが、かえって、ルキーニの存在感を浮き立たせた訳です。(瀬奈は、全くと言っていいほど逆の事をしてしまっていました)

普通、新人公演はお芝居のみを上演するのですが、基が一本立てである今回の新公は、かなり場面を削ってありました。(勿論、フィナーレもありません)その割愛された場面は全て、ルキーニが台詞のみで説明することになりました。

つまり、本公演よりもルキーニの台詞が増大したわけです。その膨大な量になった台詞を、詰まることもなく、噛むこともなく、しかも観客に明朗に伝えぬいた、その力量には拍手です。

これからも注目していきたい若手さんですね。ミーハーとろりん、またもや注目株を発見(笑)。これだから花組は「男役の宝庫」と異名を取るんですね…(笑)。

終演後、出演者全員が並んでの挨拶があったのですが、その人数の少なさに、改めて驚きました。(いつも見慣れている人数よりは、明らかに少ないので)これだけのメンバーで、本当にこれだけの舞台を創りあげた、という事に、改めて感嘆の想いが湧きました。

これから、様々な批評が出ることでしょうが、私にとっては、本当に素晴らしい新公初体験でした。私も頑張らなきゃな、と、背筋が伸びる思いがしました。

******

秋は芸術の秋よ!!と言い訳するとろりんさんの次回のレポは、ひょんな事から千龝楽をゲットしてしまった(笑)、宝塚雪組バウホール公演『ホップスコッチ』の予定です。(予定は未定)

…すみません、歌舞伎の関西興行は顔見世までないし、四季の舞台(ロングラン中)はもう何度もレポしてるんで、この秋~冬は、歌劇の舞台レポ一色になると思います…。うんざりな人は言ってくださいね(切ないけど…)。

長文、ここまで読んでくださった方に感謝いたします。



…熱いなぁ(苦笑)。そして蘭寿さん、若いなぁ(笑)。若いけど、7年目とは思えない落ち着きがありますよね。むしろ今の方がやんちゃな感じ(笑)。

このプログラムは携帯カメラで撮影したものなので、画質が悪いです。しかし、この写真も残っていたとは…あらためてありがとう、Maoさん…。

出演者語りの部分は、何と言うか、「ひとりの男役さんにハマりそうだけど、ハマったら将来が恐ろしいので踏みとどまろうとしている」感がよく伝わってくる文章です。「とむ」についての突っ込みなんて、明らかに照れ隠し入ってますからね。まぁ、この数日後に配信されたレポでは、すっかりハマってるんですよけどね(苦笑)。

そしてなぜ、「らんとむ」の参考例として「エノケン」をもってきたのか。自分でも謎です。

読み返してみて、ルドルフ役の愛音羽麗のことについては何も語っておりませんが、良くも悪くも、「イメージ通り」だったのではないかと思います。新公配役を聞いた時、「いちばん役にハマったキャスティングだなぁ」と思いましたしね。彼(女)も後日のレポにがっつり語られておりますので、お楽しみに(?)。

桜一花ちゃんのゾフィーも、とっても良かったです!メインキャストの中では最下級生ながら、演技も歌も安定していて、感心した記憶があります。取り巻きとの場面でちょっとハプニングがあった(誰かが科白を抜かしたか忘れたかして、微妙な間ができてしまった)のですが、これを力技で押し切って、とっても頼もしかったです(笑)。

桜はこの後、新人公演でヒロインを演じることはなかったのですが、貴重な別格女役スターとして活躍しています。2005年の日生劇場公演「アーネスト・イン・ラブ」では、準ヒロインとしてらんとむの相手役も勤めてくれました☆

実は、らんとむ&いちかは、私がひそかに好きな組み合わせのひとつだったりします。当時はらんとむ&あすかの組み合わせは良いなぁ、と思っていて、宙組では美羽あさひちゃんとのコンビぶりも好きだったのですが、あすかちゃんもあさひちゃんも卒業してしまったので…。いつか、TCAとかスペシャル公演で組んでくれないかぁ。

次回からは、ついに人格崩壊レポが始まりますので、覚悟のほど、よろしくお願いいたします(笑)。


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りさ

私は今中学1年生なのですが、ものすごい宝塚ファンです。この新人公演のことは最近動画を見て知りました。一度は新人公演を観に行きたいです。
by りさ (2011-10-08 12:13) 

★とろりん★

りささま、

コメント、ありがとうございます!!

かなり前にコメントを頂戴していたのにお返事が遅くなり、申し訳ございませんでした。

新人公演は、本公演とは全然違う熱気とエネルギーに満ち溢れていて、観ているこちらもとても元気をもらえます。この時の舞台から10年近く経ちますが、今でもあの時のらんとむの表情とか、鮮明に覚えています。

新人公演、いつか御覧になれますように!
by ★とろりん★ (2011-10-20 21:44) 

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