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宝塚歌劇花組公演 『野風の笛』『レビュー誕生』 [2003年 宝塚歌劇]

2003年6月22日配信

皆様、こんにちは。

今年の梅雨は、本当に梅雨らしい気候ですね~。ジメジメ、ムシムシの日々がもう少し続きますね。

さて、今回は宝塚大劇場で公演中の花組公演を報告します。

演目は、『野風の笛』(脚本・演出 谷正純)、『レビュー誕生』(原案 小林公平、作・演出 草野旦)の、2本立てです。

今回の公演は、歌劇ファンにとって少なからず波紋を広げた舞台でした。

元・雪組トップスターでもある轟悠(とどろき ゆう)が専科より特別出演し、お芝居の『野風の笛』に主演することに。

つまり、各組のトップスター(今回の場合でいくと春野)が芝居・ショーともに主演を勤めるという、これまでの歌劇の慣行を打ち崩す、ある意味、挑戦的な公演となりました。

1つの舞台(公演)に、2人のトップ(主演)スターが立つ。近年では見られなかった(って言うか、初めての)コラボレーションに、楽しみ半分、不安半分。気分が落ち着かないまま、客席に座りました。

では、本編へまいりましょう。


■ 野風の笛 ■

原作は、隆慶一郎『捨て童子 松平忠輝』(講談社)。

徳川家康(汝鳥怜)の6男、忠輝(轟悠)は、その特異な容貌により、生まれた時から父親に「鬼ッ子」と疎まれ、遠ざけられます。

花井三九郎(未沙のえる)の庇護の下、彼の息子である主水正(もんどのしょう;春野寿美礼)と、自由に、大らかに成長した忠輝は、やがてその非凡な知性と、人並み外れた武芸の才能、外国までも見据える視野の広さを発揮しはじめます。家康は、幼い頃に忠輝を疎んじたことを、密かに悔やみます。

その忠輝の、並々ならぬ能力を誰よりも恐れたのは、徳川2代将軍、秀忠。彼は自分の武芸指南役でもあり、柳生流の総領でもある、柳生宗矩(むねのり;瀬奈じゅん)に、忠輝暗殺を命じます。

***

まずは全体の感想ですが、…辛口です(笑)。

初っ端から大階段を使用した美しいオープニングの総踊りを観て、期待が増したのですが、その後、本格的に芝居が始まり、進行するうちに・・・

「…とにかく演出が、単調すぎる…」。

いや、単調と言うか…ワンパターンの応酬というか…。

何回銀橋ソロやったら気が済むんや!!と、言うくらい、登場人物が入れ替わり立ち代わり銀橋ソロ。ちょこちょこと細切れに展開するカーテン前(今回は御簾使用)の芝居、突如展開する群集芝居、の繰り返し。

今回、不覚にもオペラグラスを忘れたとろりん、さらに不覚にも…居眠りしかけました…。(何とか持ちこたえたけど)

気の毒だったのは、忠輝の正室・五郎八(いろは)姫を演じたふづき美世と、娘役、そして若手の出演者。特に娘役と若手は、一見では誰が誰だか判別がつかない衣裳と配役で、それぞれの個性が死んでしまい、もっと個性を活かした配役・演出ができたのでは…と残念です。

さて、出演者へ。

花組初出演、しかも主演という重責を担った轟ですが、雪組時代から日本物を得意としていたので、殺陣や立居振舞は、さすがの安定感と美しさ。花組の中で浮いてしまうことなく、見事に花組の空気の中に馴染んでいたのは、それだけの経験があるからでしょうね

芝居では2番手の役どころとなった春野。

オープニング、大階段で聴かせる伸びやかな歌、美しい若衆姿は、既にトップスターの風格が充分。芝居は、歌とは対照的に台詞が滑ってしまう癖が難点でしたが、命を賭けて忠輝を護ろうとする武士としての気概をしっかりと表現。

これがトップ娘役としての初御披露目となった、ふづき美世。芝居の中の五郎八姫の位置がとても中途半端に書かれていたので、ふづきとしてもやりようがなかったと思いますが、ガラスのように硬質な美しさを持つ歌声が心地よく響きました。


■ レビュー誕生 ■

パリで生まれた、宝塚歌劇の原点とも言える「レビュー」。ひとつの「レビュー」が誕生するまでの道程を、音楽家、振付家、衣裳係、照明係など、レビュー作りに携わる人々が明るいナンバーで綴っていく「レビュー」です。

自分のスタイルを譲らない音楽家と振付家、少女のピアノに束の間の夢を見る売れない作家、ゲイの(!)衣裳係、スターの原石であるダンサー。

この「レビュー」に出てくる人々は様々。でも胸の奥の想いは一緒。「レビュー」を愛する気持ち。このレビューの底に深く根付いているテーマと、作者、出演者の気持ちが重なって伝わって来るのと同時に、とても楽しい、温かい気持ちがあふれる素敵なショーでした。

見所は、中詰、「スワン・レイク」でしょうか。劇中劇のような展開で、バレエの名作である『白鳥の湖』の世界を、黒燕尾の男役と白いチュチュ風のロングドレスの娘役のダンスで表現。

古典バレエの中でも一番の正統派ともいえる『白鳥の湖』宝塚で、最も正統な服装とされる黒燕尾で表現するという演出に感心しながら、宝塚らしい、ひたすらに清く、美しく、夢のような世界に酔いしれてしまいました。

このショーは、「現実的」な演出の部分も、かなり成功しています。

主役格で特出した専科・轟悠と、元来花組のトップ(主演)スターである春野寿美礼という、2つの頂点が並んだ今回の舞台。

開演アナウンス、ショーのフィナーレであるパレードに際して、2人が大階段を下りる順番、銀橋の渡り方など、従来の歌劇の舞台で、トップスターに対してスタイルが確立していたが為に生じる、演出上の数々の問題点を、すべて納得のいく鮮やかな、且つ最適であっただろう新しい演出でかわしたのは、本当に脱帽です。

構成・演出ともに、非常に深く吟味され、練り直された跡が垣間見られました。うーん、良い仕事してますねー!(笑)

轟の堅実な、かつ真摯な舞台、春野の放つ、ショースターとしての圧倒的な輝き、ふづきの清楚で初々しい立ち姿、個性豊かな花組の出演者達が持つ、それぞれの魅力。色々なものがあふれていて、観客を、本当に幸せな気分にさせてくれたショータイムでした。

***

今回も長いですね~…すいません…。

次回は7月大歌舞伎(大阪松竹座)をご報告予定です。それまでには梅雨が明けていると良いな~。

では、毎度長文失礼します。


* * * * *


宝塚歌劇公式携帯サイト「モバイルタカラヅカ」には、スターの待ち受け画面などをダウンロードできるコーナーがあります。

確か、蘭寿とむが初めてこの待ち受け画面コーナーに登場したのは、この公演からだったんですよ。ダウンロードしたものを再生した時は、ドキドキしましたね~(笑)。このレポでもふれられている、中詰「スワンレイク」の黒燕尾でした。

この、「1つの組に2人の主演」、つまり轟がどこかの組の公演に特別出演し、その組のトップスターとダブル主演を勤めるシステムは、2009年まで続きます。それ以降は、日生劇場やバウホールなどの特別公演、ディナーショー等
で主演する形が続いています(出演者はその時々によって、各組からメンバーが選抜されます)。

新専科システム、ダブルトップと様々な試行錯誤を行ってきた歌劇団。今年は準トップというシステムが加わります。100周年へ向けての基盤を揺るぎないものにしたいという意思もわかりますが、何よりも観客の夢を壊さないで、観客の夢を傷つけないよう努力を重ねて欲しいと願います。


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