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宝塚歌劇宙組公演『傭兵ピエール』『満点星大夜總会』 [2003年 宝塚歌劇]

2003年3月16日配信

皆様、こんにちは。とろりんです。3月なのに小雪の舞う日が続いた大阪です。

さ、早速、「行った気になる、観た気になる」カンゲキ通信のお時間でございます。

今回は宝塚の宙組(そらぐみ)公演をご報告します。今日も初心者さんの友人2人を引き連れての、普及活動も兼ねたカンゲキでした(笑)。

演目は、次の2本立て。

◆ミュージカル 『傭兵ピエール-ジャンヌ・ダルクの恋人-』
◆レビュー・デラックス 『満点星大夜總会-The Stardust Revue Party-』

出演は、トップコンビ、和央ようか(わお・ようか)&花總まり(はなふさ・まり)を中心に、水夏希(みず・なつき)、彩乃かなみ、椿火呂花、ほか宙組生。専科より伊織直加、箙かおる(えびら・かおる)等の特別出演。

*『傭兵ピエール』(脚本・演出:石田昌也)*

直木賞作家、佐藤賢一の同名小説を舞台化したものです。

<あらすじ>
時は15世紀。後に「百年戦争」で知られる泥沼の戦争を、英国とずるずると続けているフランス。

この百年戦争で活躍したのが、「傭兵」と言われる、給料をもらって戦争に参加する兵隊達。戦時以外は略奪と強盗、人さらいが生業。

その数多い傭兵部隊の中でも、少しは名の知れた部隊「アンジューの一角獣」の隊長、ピエール(
和央)は、ある日、襲撃した一団の中に、不思議な空気を漂わせる娘に出会います。

自分は神の遣いだと名乗るその娘は、「フランスが解放されれば、私の身を貴方に捧げます」と告げます。

ピエールが出会ったこの娘こそ、百年戦争でフランス軍を勝利に導いたとされる「聖女」こと、ジャンヌ・ダルク(花總)。

やがてピエールは、魔女として捕らえられた彼女を救出すべく、たった1人で闘いを挑むことになります。

<感想>

◆残念ながら、原作の良いところが全く生かされてないな、という印象です。特にジャンヌ救出にピエールが向かう場面からの展開が速すぎ、流れすぎ。

◆原作では、まずピエールとジャンヌの出会いと交流を絡めつつ、オルレアンの解放とランスの戴冠式までの過程を描くのが第1の柱。

そして、異端として捕えられたジャンヌを、ピエールが決死の救出を決行し、逃避行をする。ここまでが第2の柱。

第3の柱が、歴史の上でのジャンヌ・ダルクの定説を覆す、ハッピーエンドまでの展開。

◆舞台では、この第1の柱(つまり、役や背景を紹介する説明的な部分)に時間をかけすぎてしまったために、第2・第3の柱が駆け足での展開になってしまったため、余韻に浸る時間も無く、終わってしまいました。

宝塚歌劇で発行している毎公演の舞台写真集、『ル・サンク』には、巻末に芝居の脚本が全編掲載されています。

この脚本を読み返してみると、原作で言う第1の柱に9ページも費やしており、逆に第2・第3の柱については、合わせて5ページしかかけられていません。この事を見ても、構成に偏りがあるのが明白ですね。

特に第2のクライマックス、ピエールがジャンヌを牢獄から救い出すシーン、そして第3のクライマックス、ピエールとジャンヌが、とある修道院で再会を果たしてから終幕までの展開が、あまりにもハイスピードで展開。わずか30分で3年が経過(笑)。

もっと第2~第3の柱に重点をおいて芝居を構成すれば、より緊迫感とロマンスのあふれる、重厚な舞台になったのではないかな、と思います。

◆しかし、ジャンヌ・ダルクを演じたトップ娘役、花總まりの存在感は特筆。彼女の演技によって、脚本のマズさがかなり解消されていた、といっても良いでしょう。

一般的なジャンヌ・ダルクの「聖女」のイメージを180度覆す、何をやるにも一生懸命で大真面目、純粋な(=思い込みの激しい>笑)少女役を好演。

これまで多かった高貴な役から一転、純粋で天然ボケな少女役を演じたわけですが、またも新境地開拓、といった感じ。

しかし、「私はジャンヌ・ダルクと言います。戦争が始まったらオルレアンに来てください」、「私はもう…神の声が聞こえないのです」など、要所要所を締める台詞の口跡が、とてもはっきりしており、芝居を引き締めるポイントになっていました。

◆主役ピエールを演じた宙組トップ、和央ようかも、脚本では描ききれていなかった、ピエールの人間的な深さを、自分なりに掘り下げた後が見られました。

何よりも、前半、ハチャメチャな行動を繰り返し、後半、牢獄で心身ともに痛めつけられ、深く傷ついたジャンヌを、静かに受け止める大きさがうまく出てました。

さすがにトップコンビですね。彼女達の好演が他の出演者達(←脚本での書き込みが、これまた中途半端)を、上手く引っ張っている舞台でした。

*『満点星大夜總会』(構成・演出:斎藤吉正)*

タイトルが漢字だらけ、でご推察がつくとおり、全編、チャイニーズ(香港系)の香り漂うレビューです。

娘役による剣舞あり、黒燕尾の男役総動員の大階段でのダンスあり、カワイイ熊猫カルテットあり、なぜか孫悟空あり、合同結婚式あり、アイドル誕生あり、と、めまぐるしく変化と進化を遂げる香港のように、エネルギーとスピードと極彩色にあふれたレビュー。

個人的には、星の砂漠に囚われた恋人達(水夏希&彩乃かなみ)のデュエットダンス、そして海軍兵(伊織直加)とかつての恋人(椿火呂花)をめぐる悲恋の物語が好きでした。

ストーリーダンスは、やはり情感がにじみ出るので、思わず見入ってしまいます。

そしてフィナーレの、大階段での黒燕尾の群舞も良かったですね~。男役の黒燕尾は、宝塚歌劇の真骨頂ですね。

***

いやぁ~、今回は芝居が「おいおい」って感じのモノだったので(ネタばれ)、友人の評価が気になるところでしたが、さすがに関西人たち、あらゆる場面でツッコミ入れまくり(笑)。全体的には「やはりラスト30分が、展開速すぎ」で一致。レビューは楽しんでくれたみたいで、良かった…。

ちょっと今回は昨年の月組公演に続く辛口コメントとなってしまいました(苦笑)。でも和央ようかの歌には、毎度の事ながら癒されます。

次回は、南座大歌舞伎、昼の部を報告します。ではでは~。


佐藤賢一さんの小説は、この公演より以前に『王妃の離婚』とこの『傭兵ピエール』を読んだことがあります。『傭兵~』を読んだ時の感想が、「これ石田先生好きそうだなぁ~」。よもや、その印象がそのまま舞台化されるとは思いもしておりませんでした(笑)。

この公演では芝居でハナちゃんがボブショートや甲冑を着用したり、ショーではアイドルに変身したり、大活躍でした~。

このころ、斎藤先生のショーでは、若手娘役による熊猫(パンダ)ちゃんカルテットやうさぎちゃんカルテット(@月組公演『BLUE・MOON・BLUE』)などのコスプレが必ず登場して、「宝塚のショーも、新しい感覚が入ってきたなぁ…」と思っていました(笑)。

そんな斎藤先生も、昨年は同じ宙組で『TRAFALGAR』という軍服萌え・最強ヴィジュアル萌えまっしぐらな作品を作ってくれましたしね☆これからも全力で宝塚の、男役の魅力を追及する作品を発表して欲しいです。


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