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カンゲキ☆ウラ通信第7回 バウ・ワークショップ雪組公演 [2003年 宝塚歌劇]

2003年3月6日配信

ども~、とろりんですっ。実は今年入って初めてのウラ通信です(笑)。

今日は、宝塚歌劇若手ワークショップの雪組公演を報告します。

ウラ通信読者の方なら、ご存知の方も多いかと思いますが、今年は宝塚バウホール開場25周年。その記念イベントの一環として、「バウホール5組連作ワークショップ」が企画されました。

植田紳爾先生が、私達も生まれていないくらい大昔に書かれた日本物の民話ミュージカルを、若手の演出家による演出の下で、その組の若手男役2人が主演する、という趣向のもの。

これまでに、

宙組(遼河はるひ、華宮あいり)、
星組(涼紫央、柚希礼音)、
月組(月船さらら、北翔海莉)、

の3組が上演され、残るは雪組と花組。まずは雪組公演からの観劇となりました。(このうち、全日程完売したのは花組のみ…汗)

演目は、

『春ふたたび』(壮一帆主演、大野拓史演出)
『恋天狗』(音月桂主演、児玉明子演出)。

***

全体の感想としては、「脚本で見せる大野」と、「演出で見せる児玉」という、2人の演出家のカラーが色濃く分かれた、という印象です。

*春ふたたび*

<あらすじ>
出雲の国の新領主、藤原道忠(壮)は、善政を敷き、若いながらも領民の信頼を受けています。

ある日、村の視察に訪れた道忠は、村民に「八重垣」という踊りを知らないか、と尋ねますが、村人は知りません。

その時、村人の1人が、やす(高ひづる)という名の乞食の老婆なら知っていると、彼女を連れてきます。

我が身を恥じつつも、「八重垣」を踊るやす。それを見て道忠の心は揺れ動き、そして確信します。

実は、やすと道忠は実の親子。あまりにも非情な理由で生き別れになった母を追い求め、道忠は再び出雲に戻ってきたのです。

しかし、その過去を恥じ続けてきたやすは、頑なに道忠を拒みます。やがて母の胸の内を察した道忠は、心を残しながらも去っていきます。我が身の恥を責めて号泣する、やす。そして…。

<感想>

演出ミスが、いかに舞台に致命的な結果を招いてしまうのか、痛感。大野先生が、植田脚本の世界を、どう描きたかったのか、ちょっと首をひねってしまいました。『月の燈影』が佳作だったために、とても楽しみにしていた分だけ、がっかり感が大きいです。

まず、くどすぎ(これは脚本・植田先生の問題)。そして、村人達の役どころに問題あり。なんでそんなにも親子の心情を理解できないんか!と観ていてストレスがたまってきます。まるで「さあ、親子と名乗れ、早く名乗れ」と、やすを追い詰めていく、アジテーターの集団のようにしか見えない。(若手の必死さが、かえってそんな印象を強めていました)

特にラスト近く、道忠が心を残しながらもやすの想いを汲んで去った後、「婆さまはあほじゃ!何で名乗ってやらんのじゃ!」「婆さまのばか!!ばかーっ!!」という村人の台詞には、「やすの気持ちが解からんあんたらの方が、よっぽどあほちゃうかーっっ!」と、思わず舞台に殴り込みをかけそうになるとろりん(笑)。

また、道忠とやすが、ようやく親子の証を認め、抱き合う終幕。なぜ村人勢揃いだったのか。舞台上、二人で無言で踊り合い、抱き合う方が余韻があったのに!!

<出演者>

●主演の壮一帆。

持ち前の端正な顔だちに、身に付いてきた気品と華は、どんどん磨かれていってます。

登場前、「お若くて、独り身かぁ~!!綺麗にしてねぇと♪」等々、村娘達のキャピキャピした会話があるのですが、思わず客席でも、キャピキャピしてしまった女が1人…(笑)

登場シーン、客席に後ろ姿を見せた後、すっと正面に向き直った時に放たれた美しさ、オーラは
「スター」を感じさせました。良い男役になってきましたね。

しかし壮くん、やすを見つめる眼差しが、「生き別れの母を慕う」という感じではなく、「理不尽な理由で引き離された恋人を想う」ものを感じさせてしまったのは、彼女の演技力の若さゆえか、
…とろりんの欲目ゆえか…(爆笑)。

●やすを演じた高ひづる。

…個人的には、疑問を感じる演じ方でした。まず、乞食の「老いさらばえた」老婆、という役なのに、仕草はテキパキ、台詞はえらくピンシャンとしていて、ちょっと違和感が。(もうちょっと弱々しく演じて欲しかったなぁ…)

でも「八重垣」を踊った時の手の動き、足さばきはさすが。

●白眉は、歌う村の女を演じた、研3の湖城ゆきの。その役名どーり、歌う役(笑)なのですが、その歌がめちゃウマ!!あんなに地声が無理なく伸びる人は、初めて。その場で、プログラムをめくりたい衝動にかられたのは久しぶりです。(客席真っ暗なんであきらめましたが)

◆しかし今日は、とんでもないハプニングが。

本舞台真上に設置されているライトが、落下しかけたんです!

幸い、ライトを吊り下げていたロープ(?)が一本だけひっかかって、それを頼りに、そろそろと引き揚げることができたのですが、ちょうど、村人達が控えている位置のほぼ真上だったので、あのロープがつながっていなかったら…と思うと、ゾッとします。

舞台では、ちょうど「おお!御領主様のお越しじゃ!」と庄屋が言った瞬間に、がくん!とライトが吊り下がってきたので、「壮くん、宙づりで登場?なんて斬新な演出なんや!んなワケないやろ」と思わず一人ボケ一人ツッコミ(笑)。

客席(と、客席から登場する壮くんも、であろう)が青ざめた一瞬でした。

*恋天狗*

<あらすじ>

ある村に住む、いたずら好きの小天狗(沙央くらま)は、村の娘、八重(白羽ゆり)に片思い。でも八重は村の若者、弥太(音月)に恋していて、あの手この手でアタックしますが、鈍感な弥太は気付きもしません。

何とかして八重と話がしたい小天狗は、弥太に化けて八重に接近。本物の弥太と、小天狗の化けた弥太が入れ替わり立ち替わりしているうちに、何と弥太は、庄屋(磯野千尋)から、小天狗と対決する羽目に。(実はコレ、弥太に化けた天狗が引き受けた)

「どうか、弥太さんを勝たせてあげてくださいっ」と地蔵に必死に頼む八重の為に、小天狗はわざと弥太に負けます。これで一件落着!と思いきや…。

<感想>

幕が上がると、一面に咲き誇る大きな桜の木。『春麗』の大道具、上手く使いまわしたね、児玉先生…(微笑)。彼女は、客席の視線を一気に舞台に引き込む演出が上手いと思います。

『春ー』が春の花曇のようにしんみりとしていたのに対して、こちらはカラッと青空が広がるような、楽しい、明るい舞台に仕上がっていました。

<出演者>

●主演の音月桂。

弥太自身と、天狗が化けた弥太の二役を、仕種だけでなく、声音もまるっきり変えて、生き生きと好演。

音月が、これほどの演技力を見せるとは思わなかったので、嬉しい驚きです。

●相手役の白羽ゆりは、経験の積み重ねがしっかりと舞台に現れており、音月をさりげなくリードしながらも、恋する娘のウキウキとしたかわゆらしさと、恋に突き進むおませぶりを嫌みなく演じて好演。

●小天狗を演じた沙央くらま。

体当たりの一生懸命な演技が好感をよびました。

フィナーレには壮くんも道忠役のまま出てきてくれたのですが、(1時間半、何してたんやろう…)いかんせん、壮くん以外の出演者は全員、村人役。楽しそうに皆が踊る中、一人気品ある狩衣姿の壮くんの所在無さげぶりが、いとおしく感じられました(笑)。

***

総じて、今回のワークショップは、二人の演出家の長所と課題が浮き彫りにされた感があります。

◆大野は、自身の脚本で見せる、最小限の台詞で緻密な、繊細な世界を展開させる構成力は素晴らしいものがありますが、誰かの作品を、自分の世界の中で描くのは不得手なのでは、と感じました。(大先輩の脚本を扱う、ということに対する遠慮もあったでしょう)

脚本構成力がしっかりしている、という点においては、他の若手演出家の中でも抜き出たものがあると思うので、今回の機会を糧に、益々自分の世界を構築していって欲しいです。

◆対する児玉は、二度目のワークショップ参加ということで、他人の脚本をどう自分のものにするか、という点で大野よりコツをつかんでいたこともあるでしょうが、とにかく、観客の意識を、一気に舞台に集中させる演出力はあります。

しかし、そのダイナミックな演出力は認めますが、舞台の基本となるべき脚本は、あまりにも観客無視、かつ破綻が多いので、(『歌劇』3月号の天野道映の劇評を参照)こちらの向上に力を入れてほしいです。(もしかしたらショーを作らせたら良いかもしれない)

とろりんさん、若手を語らせると熱くなるので(笑)、今回の若手バウレポは、全てウラ通信で語らせていただきます。

次回は花組か…らんとむとみわっちか…もっとエライことになるわな…(笑)。

…お楽しみに~…?(笑)


バウ・ワークショップかぁ…懐かしいなぁ…。植田先生の『恋天狗』、『春ふたたび』、『おーい春風さん』の3本のうち2本ずつ上演したんですよね。

今でも、まぶしいスポットライトの中、ゆっくりを客席を進んでくる壮くんの神々しい姿を思い出します。

花組では蘭寿とむ(らんとむ)主演で『恋天狗』、愛音羽麗(みわっち)主演で『おーい春風さん』を上演したんですよね。

『恋天狗』もたいがいでしたが(暴言)、とにかく『おーい春風さん』がこれから新人公演でも活躍していくであろう新人男役スターが演じるには大変難しい(控え目な表現)「角兵衛獅子」一座の年長者がという役どころ。もちろん、他の出演者も角兵衛獅子一座の子どもたちで、唯一といっていい大人が矢吹翔さん演じる親方役だけという。しかもその親方が極悪非道という、どーしよもうないキャスティングでした(暴言その2)。

それにしても、この時の矢吹翔さんの色気はただならぬものがありましたね~(え?)。

物語後半、回心した親方が最年少のおちか(桜一花ちゃん)の頬をそっとなぜるシーンがあったのですが、その手つきと眼差しが色気ダダ漏れで、「お、親方、そのまま押し倒すんちゃうかっ」とドキドキしてしまったほどでした(←R15指定)(←妄想まっしぐら)。

『月の燈影』、『エリザベート』新人公演と、らんとむファンとして彼女の舞台を観劇したのはこれで3度目だったのですが、この時のらんとむにはあまり良い印象がありません…。

あまりに演りようのない役でもあったのですが、この頃のらんとむは、男役としての技量は(若手の中では)高くても、どうしても「華が足りない」と感じる部分があって…。この時代は彼女の上にも下にも華のある男役がひしめいていたので、なおさらだったかもしれません。

新公卒業後から宙組に移籍するまでの4年間は、らんとむにとって苦しい時代だったと思います。(途中、2006年に『マラケシュ・紅の墓標』でのヒットはありましたが)

この公演から8年。宙組で男役芸に磨きをかけてきたらんとむも、ついにトップスターとなるのですね。なんだか、まだ実感がわきません・・・。


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