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顔見世 四代目尾上松緑襲名披露興行(京都南座) [2002年 歌舞伎]

2002年12月24日送信

「顔見世や 松の緑に 花そろう」
(とろりん)

皆様、こんばんは。とろりんです。

今回は、めくるめく宝塚歌劇の世界からようやく離れて(笑)、3ヶ月ぶりの歌舞伎見物です!!京都の冬の風物詩、「顔見世」!!

しかも今年は、昨年の10代目三津五郎に続いて4代目尾上松緑の襲名披露興行ともあいまって、当代屈指の名優が勢揃いです。

正式興行名は「當未年吉例顔見世東西合同大歌舞伎」。…ふりがなは、「あたるひつじどし きちれいかおみせ とうざいごうどうおおかぶき」です。長。

◆演目は、以下の通り。

『鳴神』
『4代目尾上松緑襲名披露口上』
『勧進帳』
『馬盗人』

最後の演目は、やはり去り行く午(うま)年にかけてるのでしょうか?

◆出演は、4代目松緑に加え、市川團十郎、尾上菊五郎、坂東三津五郎、尾上菊之助、片岡仁左衛門、中村鴈治郎他。…うおお、名前を連ねるだけで興奮っっ(笑)。

◆では、参りましょう。序幕は新・松緑と鴈治郎による『鳴神』

初っ端から4代目松緑の襲名披露狂言。なんちゅー豪華さだ、顔見世!

朝廷との揉め事から、鳴神上人が雨の封印をしてしまったので、都は日照り続き。困った朝廷は、宮廷につかえる雲絶間姫(くものたえまのひめ)に、上人に封印を破らせるよう命じます。

当代一のキャリアウーマンでもあり、絶世の美女でもある姫は、一計を案じて、上人に「段階アップ型お色気作戦」(笑)で迫ります。

彼女の自由自在の色仕掛けに、ついに屈してしまった上人は還俗を決意。姫に勧められるままに酒を飲んで泥酔。その隙に姫は封印を破り、彼女の仕事はパーフェクト。即脱出。目が覚めた上人、全ては彼女の作戦だったと知り、怒り狂います…。

松緑の鳴神上人に、鴈治郎の雲絶間姫。

若さの松緑を、ベテランの鴈治郎が余裕をもって受け止める、非常に安定したお芝居でした。

鴈治郎の存在感に、松緑がやや霞んでしまったかな…という印象はありますが、初めて女体に触れた時のドキドキした感じとか、後半の怒り狂う荒事で発揮された若さと荒削りのパワーを放出させた演技はお見事。その荒事を際立たせるためにも、前半は、もうちょっとテンポ良いお芝居が出来れば、と思いました。

鴈治郎の絶間姫。絶品です~…ホレボレ…。まさに、「花のような」という形容がピッタリと来る役者さんです。ふわり、と一回転すると、花びらがぱぁっと周りに舞い飛ぶような錯覚を受けるんです。

あの艶やかさ、華やかさは、この人独自のものですね。『藤娘』といい、この絶間姫といい、その美しさは、まさに至芸。

◆口上は、ちょっと人数が少なかったですが、鴈治郎、菊五郎、團十郎、左團次、仁左衛門、秀太郎、時蔵、などなど、ものすごいメンバー勢揃い。4代目松緑の父、初世辰之助(3代目松緑追贈)と同世代の方が多いので、お父様の思い出話などが多かったです。

◆それでは、当代屈指の大顔合わせとなった、『勧進帳』

時々舟こいでましたけど(笑)、素晴らしかった!!

鎌倉時代、兄頼朝との不和が原因で追われる身となった源義経一行は、山伏に身を変えて奥州へと向かいます。その途中、安宅関(あたかのせき)で、関守富樫に見咎められた義経一行。しかし第一の家来、弁慶のとっさの機転により詮議の目をすり抜けます。富樫は、一行が義経一行であることを見抜きますが、主君をひたすらに守ろうとする弁慶の気迫に心討たれ、通過を許します。富樫が見守る中、義経一行は奥州を目指して再び旅立っていくのでした。

團十郎の弁慶、菊五郎の義経、仁左衛門の富樫。

東西合同興行だからこその、ベストキャスティングとも言えるでしょう。

圧倒されたのは、まず最初の花道からの出。

義経が登場して、彼につき従う四天王(と言うのか?)の登場の後、ゆっくりと登場する弁慶。その登場を見届けた義経と弁慶がゆっくりと目を交わし、二人揃って、客席にパッと向き直って立った瞬間の、一気に観客の目を釘づけにした、あの大きさ!!一瞬にして南座の空気が、たった2人の役者によって掴まれた、という感じでしたね。さすが、音羽屋&成田屋!!

そして弁慶と富樫の息詰る問答。…問答の場面は、ウトウト…としてしまった不届き者、とろりん(笑)。

でも、やっぱり大顔合わせだ、すごい!!と思ったのは、舞台の空気を一瞬にして切り替えてしまう、その気迫。

問答も終わって、富樫が通過を許した時には、舞台上にホッと一息、安堵したような空気が包むんですよ。しかし、強力に身を変えている義経が見咎められた瞬間、舞台上に、一気に緊迫した鋭い空気が張り詰める。大役者というのは、舞台上の空気を自在に操れるものなのだ、としみじみ感服しました。

仁左衛門の富樫も、素晴らしかったですね。義経一行だと確信しながらも、全ての責任を取る覚悟で通過を許す旨を伝えるその横顔。自らの信念を胸に、遠のく義経一行を、最後まで見送るその姿。最大限に自分の仕事をやり遂げた満足感とも取れる表情が印象的でした。

◆最後の演目はコミカルな舞踊劇、『馬盗人』

簡単に説明すると、お百姓が購入した馬を、悪者2人組(三津五郎&菊之助)が盗んで、その馬を巡っておおわらわ、というストーリーなのですが、これが、かなり笑えました。

もう、馬(三津右衛門、大和)が大活躍!!女舞を踊るわ、坂東流ゆずりの見事な足さばきを見せるわ、七三(しちさん:花道のセリがある位置)で大見得切るわ、縦横無尽の大活躍(笑)。

菊之助が吉本新喜劇ばりに吹っ飛ばされ(笑)、三津五郎が襟首を掴まれて振り回され(笑)、翫雀(かんじゃく)が後ろ足で蹴り上げられ(笑)、ホントにおかしい舞台でした。

舞踊劇なので、三津五郎が踊るのですが、素晴らしいですね。私はこの人の踊り、ホント好きです。

体重を感じさせない、軽やかな足さばきでありながら、羽目板を踏んだ時の、ドン!という音の正確さ。(なんと言うか、しっかりと音が出ますよね)ひらひらと舞うしなやかな指遣いの細やかさ。さすが坂東流家元!!大和屋!!

と、いうことで、非常に見応えのある顔見世、夜の部でした。個人的には女方が登場する芝居が一幕しかなかったので、華やかさが足りないかな…という印象でしたが(昼の部は、これでもかと言わんばかりに女方大活躍)、素晴らしい名舞台に触れることも出来ましたので、大満足です。

これで、2002年の個々のカンゲキ通信は、送り納めです。今週中に歌舞伎の統括レポを配信しまして、ようやく(笑)今年のカンゲキ通信も大団円を迎えます。お楽しみに。

もう年末ですね。皆様、くれぐれも体調をくずされませんように。では、長文失礼いたします。



ようやく、歌舞伎レポが登場しました。

歌劇レポよりは若干折り目正しい感じ。当時はまだ2年にも満たない歌舞伎初心者でしたので、間違ったことは言わないようにしよう、という心づもりが伝わってくる文章です(苦笑)。

それよりも何なんですか、突然現れた冒頭の一句は(恥)。

これは当時、一部カンゲキ仲間のあいだで「一句作る」ことが流行していたのでした。脳の活性化のため、とかなんとか、理由づけはしていたと思うのですが…(苦笑)。お互いのメールのやりとりの際にも、必ず一句したためたりして。あれ、あのブームはいつの間に消滅したのかな…(汗)。

本家ブログでも、時々下手な一句をつけたりしておりましたが、ある時それが原因でありえない誤解を受けましたので、それ以来、公表はしなくなりました(苦笑)。

それにしても、どんな時も熱いレポを書いておりますね。「!!」の多いこと多いこと。

現在の坂田藤十郎丈は、当時まだ中村鴈次郎の名前で舞台に立たれていたのですね。この方が女方を演じる時の、少女のような愛らしさと軽やかさは、まさに国宝です。

團菊+仁左衛門丈の勧進帳…!!そりゃ、迫力違いますよね。

『馬盗人』は、その後歌舞伎座や日生劇場国際ファミリーフェスティヴァルなどでも上演されました。「日本むかしばなし」みたいにわかりやすいお話だし、踊りも充分楽しめるので、大好きな演目のひとつです。

年末年始は、大阪の歌舞伎ファンにとっては、とてもとても幸せな季節。いつも3~4か月に1度しか観られない歌舞伎の舞台が、12月南座顔見世、1月の松竹座初春歌舞伎と、2か月続けて歌舞伎を観られるんですもの♪いつも心待ちにしていましたね~。

歌舞伎座が休館している今年からしばらくは、大阪での歌舞伎公演も少し増えるようですし、関西在住の皆さん、これを機にぜひ歌舞伎の舞台へ足をお運びくださいね~!


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